高校最後の1年をスタートさせた高川学園のエースFW山本。写真:安藤隆人
日本列島を駆け抜けた忙しい春
福岡から広島、広島から福島へ。これは筆者がフェスティバル取材の流れで辿ったルートだが、これと全く同じルートを辿った選手が高川学園のエースストライカー・山本吟侍だ。
山本は「大迫勇也選手は、背負いながらも前を向いていくプレーができるフォワード。そういったフォワードは日本ではあまり少ないと思うので、僕はそこを狙っています」と相手を背負ってでも、間合いを開けられてでも、前を向いて打開し、ゴールを決め切るストライカーになるという理想像を持っている。
その理想像に近づけるだけの能力を持っている。180センチのサイズを持つ山本の特徴は、その長い手足にある。股関節と肩甲骨の可動域が広く、長い手足を苦なく操作できる。だからこそ、ボールを受ける際に勢いのあるボールをDFを背負いながらでも身体で吸収して足もとに収めたり、鋭いターンで前を向いてすぐに縦に仕掛けたりできる。
シュートのミートポイントも広く、身体に接近したボールも、離れたボールでも正確に足を振り抜けるからこそ、相手DFからするとどこからでもシュートを打たれる感覚に陥る。
「前向きでいなすことも、背負っていなすことも好き。これは小学生の時、技術にフォーカスを当てたチームで足もとを磨いて、高川学園中ではボランチをやらせてもらって、高校に上がってからはフォワードで背負うプレーを教えてもらえたからこそ、いろんな形の引き出しを持てるようになったと思います」
高校トップレベルの力を持つ山本は、冒頭で触れた通り忙しい春を過ごしている。その流れを辿ってみると、福岡では翌日からサニックス杯国際ユース大会に出場をする青森山田との練習試合に出場。相手の強度の高い攻撃に対し失点を重ねたチームにおいて、1人気を吐く形で2ゴールをマークした。
そして広島では中国新人大会に出場し、初戦の市立沼田戦では、前線での正確なポストプレーで起点になると、右足ミドルを突き刺して4-1の大勝に貢献。チームは勢いに乗り、決勝まで進出すると、決勝では前半の35分間のみの出場ながら2ゴールを決めて、3-1の勝利に導き、チームも大会4連覇を達成した。
山本は前半終了後、すぐにスタジアムを離れて、福島に移動。Jヴィレッジカップに参戦しているU-17日本高校選抜に途中合流した。Jヴィレッジカップは連戦の影響かノーゴールに終わったが、すべての場所でプレーを見てみて、今年に入ってさらに進化を感じる部分があった。
それはターンの質の向上だ。背負った状態でボールを受ける時に、重心を相手側に預けっぱなしにするのではなく、受けた瞬間に軸足を抜く形でターンに入る。これによって2枚目、3枚目の相手を素早いボールタッチでかわせる。
実際に中国新人大会でも3人に囲まれた状態で、1人を背負って胸トラップしてから、すぐさま右足でボールをコントロールしてトラップ際を狙ってきた2枚目のDFをかわし、さらに加速をしてもう1人をかわして突破して見せた。
「ターンの質は江本(孝)監督からずっと言われてきたし、意識をしてきました。もっと磨いて前線でやれることを増やしていきたい」
卒業後の進路はプロか大学かまだ決めていないという。ただ、どちらの道を進んだとしても自分が成長をし続けなければ「息の長いサッカー選手になりたい」という将来ビジョンには到達しない。
日本列島を駆け抜けたストライカーは将来の選択も考えながら、さらなる成長をイメージして高校最後の1年をスタートさせた。
取材・文●安藤隆人
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■代表決定日一覧 ▽北海道・東北北海道予選:11月12日青森県予選:11月5日岩手県予選:11月5日宮城県予選:11月5日秋田県予選:10月21日山形県予選:10月21日福島県予選:11月5日 ▽関東茨城県予選:11月12日栃木県予選:11月11日群馬県予選:11月12日埼玉県予選:11月14日千葉県予選:11月11日東京都A予選:11月11日東京都B予選:11月11日神奈川県予選:11月12日山梨県予選:11月11日 ▽北信越・東海長野県予選:11月11日新潟県予選:11月12日富山県予選:11月11日石川県予選:11月5日福井県予選:11月5日静岡県予選:11月11日愛知県予選:11月11日岐阜県予選:11月11日三重県予選:11月11日 ▽関西滋賀県予選:11月11日京都府予選:11月12日大阪府予選:11月11日兵庫県予選:11月12日奈良県予選:11月12日和歌山県...
※2023年10月5日時点 【高体連】▽帝京DF梅木怜(→FC今治)MF横山夢樹(→FC今治) ▽興國MF國武勇斗(→奈良クラブ)MF宮原勇太(→グールニクザブジェ) ▽飯塚DF藤井葉大(→ファジアーノ岡山) ▽大津MF碇明日麻(→水戸ホーリーホック) ▽宮崎日大DF松下衣舞希(→横浜FC) ▽神村学園FW西丸道人(→ベガルタ仙台) ▽鹿児島城西MF芹生海翔(→藤枝MYFC) 【Jクラブユース】▽北海道コンサドーレ札幌U-18FW出間思努(→北海道コンサドーレ札幌) ▽モンテディオ山形ユースGK上林大誠(→モンテディオ山形)DF千葉虎士(→モンテディオ山形)▽浦和レッドダイヤモンズユースMF早川隼平(→浦和レッドダイヤモンズ)▽ジェフユナイテッド千葉U-18DF谷田壮志朗(→ジェフユナイテッド千葉)▽FC東京U-18MF佐藤龍之介(→FC東京)GK小林将天(→FC東京)▽東京ヴェルディ...
高校サッカーの強豪、昌平高(埼玉)の藤島崇之監督が退任することが分かった。習志野高(千葉)、順天堂大出身の藤島監督は、07年に昌平の監督に就任。当時無名の私立校を短期間で3度のインターハイ3位、全国高校選手権8強、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEAST昇格など、全国有数の強豪校へ成長させた。 判断力、技術力の質の高い選手たちが繰り出す攻撃的なサッカーが話題となり、また、12年に創設した育成組織、FC LAVIDAとの中高一貫6年指導によって、選手育成でも注目される高校に。現在、7年連続でJリーガーを輩出中で、U-22日本代表FW小見洋太(新潟)やU-17日本代表MF山口豪太(1年)ら多数の年代別日本代表選手も育てている。また、藤島監督は日本高校選抜やU-18日本代表のコーチも務めた。 昌平は近年、男子サッカー部の活躍に続く形で他の運動部も相次いで全国大会出場を果たしてい...
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鹿児島城西のMF芹生は、身体の使い方が上手く、パスセンスも高い司令塔だ。写真:松尾祐希 今年のチームは攻撃陣にタレントが揃う “半端ない”FW大迫勇也(神戸)を擁して選手権で準優勝を果たしてから15年。鹿児島城西が虎視眈々と復権の機会を狙っている。 鹿児島の高校サッカーと言えば――。2000年代の前半までMF遠藤保仁(磐田)やMF松井大輔(YS横浜)らを輩出した鹿児島実がその名を轟かせた。 近年は神村学園が躍進し、昨年度は福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁してベスト4まで勝ち上がったのは記憶に新しい。インターハイは6年連続、冬の選手権も昨年度まで6年連続で出場しており、今季から2種年代最高峰のU-18プレミアリーグ高円宮杯に参戦するまでになっている。 一方で鹿児島城西は前述の通り、2008年度の選手権で日本一にあと一歩まで迫り、以降も神村学園と切磋琢磨し...
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