【選手権】取材ライターが選ぶ「下級生ベスト11」!神村学園と昌平から3名をセレクト。初Vの岡山学芸館からは…
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GKには日本一に貢献した守護神を選出


例年にない混戦を勝ち抜き、101回目の高校サッカー選手権を制したのは岡山学芸館だった。準決勝で優勝候補の神村学園を撃破。決勝では同じく注目度が高かった東山を下し、創部初の日本一に輝いた。

そして、来年に向けた戦いはすでに始まっている。大会前から注目されていた選手はもちろん、大会中に株を上げて一躍来季の主役候補になりそうなタレントも現われた。本稿では、来季の高校サッカー界を牽引しそうな逸材をピックアップ。高卒でプロ入りを目ざすべき有望株から、もうひと伸びすれば次のステージが見えてくる選手などをベストイレブンの形式で紹介する。

――◆――◆――

GK
平塚 仁(岡山学芸館/2年)
プロゴルファーの平塚哲二氏を父に持つ守護神は試合を重ねるごとに逞しくなり、安定したプレーでチームを最後尾から支えた。キャッチングの技術が高く、シュートストップの質も抜群。準決勝の神村学園戦ではPK戦でFW福田師王(3年)のキックを止めるなど、ここ一番の集中力も光った。パントキックも正確で、カウンターの起点として攻撃面でも貢献。日本一を手にした守護神は最終学年でどんな成長を遂げるのか。前橋育英の雨野颯真(3年)と並んで、高校年代を牽引するGKになるはずだ。

DF
田辺幸久(大津/2年)
春先は精神的にやや脆い印象があり、球際で戦えない場面が多かった。だが、夏以降はメンタル面が成熟し、大崩れする機会が減少する。プレー強度が増し、攻撃面でも正確な左足のキックからチャンスを作れるようになった。今大会でも成長の跡を示し、左SBとして活躍。推進力を発揮して攻撃に加わりつつ、守備では個性豊かなアタッカー陣を封じた。サイズと技術を併せ持つ成長株が今大会で示した可能性は無限大。同級生で同じポジションの吉永夢希(神村学園)、藤井葉大(飯塚)と並んで来季の注目したいSBのひとりだ。

志津正剛(東山/2年)
準優勝を収めた東山において、唯一下級生でレギュラーを務めたCBだ。キャプテンの新谷陸斗とコンビを組み、最終ラインで相手の攻撃をタフに跳ね返し続けた。決勝では3失点を喫したものの、準決勝までの5試合では2失点と、堅守を構築したチームを語るうえで欠かせない。対人プレーの強さは目を見張るモノがあり、国立で味わった悔しさを成長の糧にできれば、さらなる飛躍も見込める。来季はチームの中心を担う男のリベンジに期待したい。

石川穂高(昌平/2年)
両足でボールを扱える稀有なCBはビルドアップで魅せた。MF荒井悠汰(3年/FC東京加入内定)など攻撃陣にタレントが揃うチームにおいて、攻撃の出発点を担当。瞬時に適切な場所にポジションを取り、正確なパスで前方にボールを付ける。ロングフィードも正確で、局面を変えるキックで攻撃にアクセントを加えた。DF津久井佳祐(3年/鹿島アントラーズ加入内定)が抜ける来季は名実ともに守備の大黒柱となる。守備の強度を高めれば、高卒でプロ入りも狙えるタレントだ。

中盤には昌平から2名をピックアップ

MF
土谷飛雅(昌平/2年)
最終ラインと前線を繋ぐ役割を担い、正確なパスでゲームを組み立てた司令塔だ。最大のハイライトは前橋育英との3回戦。開始早々に高精度のボールを最終ラインの背後に蹴り込み、荒井の先制点を演出した。良質なキックはセットプレーでも威力を発揮し、ドライブ回転でニアサイドを超えたあたりに落とす技術は高校年代屈指のレベル。来季は守備の強度を高め、攻守で替えがきかない存在になれるか。初の日本一を狙う埼玉の雄でキーマンになるのは間違いない。

長 準喜(昌平/2年)
ハーフスペースでボールを受けるのが上手いプレーメーカーだ。相手の逆を突くターンが得意で、たやすく前を向いて難なくボールを運んでいく。予選まではトップ下で起用されていたが、今大会はボランチでプレー。同級生の土谷とコンビを組んで、多くの決定機を生み出した。最終学年を迎える来季は2つ下の実弟でU-15日本代表歴を持つ璃喜が入学予定。弟と共闘しつつ、高卒でのプロ入りを見据えてより高みを目ざす。

吉永夢希(神村学園/2年)
左SBとは思えない攻撃力を持つ注目株だ。U-16日本代表の一員として挑んだ昨年10月のU-17アジアカップ予選でブレイクし、選手権の前にはJ1クラブのトレーニングにも参加した。今大会は相手の攻撃を警戒し過ぎたが故にバランスを取り過ぎたが、試合を重ねるごとに持ち前の推進力と破壊力満点の左足からゴールを脅かした。岡山学芸館との準決勝では30メートルほどの距離をロングスプリント。パスを受けて得意の左足で強烈な一撃を見舞った。チームの軸となる来季は高校サッカー界を牽引する存在として、結果が求められる。

森田夢生(履正社/2年)
パワフルな攻め上がりで可能性を示した。右SBのレギュラー格だったが、今大会は全3試合で途中からプレー。東邦との1回戦では後半開始からピッチに立ち、抑えの効いた左足の弾丸ショットでチームの4点目を奪った。残る2試合も前半33分とハーフタイムに投入されるなど、全国の舞台を3試合経験できたのは財産になる。新シーズンは課題の守備面を改善し、攻守で違いを作れるSBになれるか。

シャドーストライカーには1年生を唯一セレクト

名和田我空(神村学園/1年)
全4試合中、2試合で逆転勝利を収めて準決勝まで勝ち上がってきたチームにおいて、流れを変える切り札として重宝されたのが1年生10番だ。U-16日本代表ではFWで起用されるケースが多いが、今大会は左サイドハーフでプレー。途中からピッチに入ると、内側のポジションを取ってキレのあるドリブルとフィニッシュワークで相手の脅威になった。周囲とのコンビネーションも良く、中に入ることで左SB吉永の攻め上がるスペースを確保。上手く囮に使いながら、自ら仕掛ける形は効果的だった。無得点に終わったものの、1年生とは思えないプレーを見せた有望株は来季こそチームに初の日本一をもたらすか。

田口裕真(岡山学芸館/2年)
鹿島学園との2回戦からスタメンに定着したチャンスメーカーは経験を積み、一皮剥けた。トップ下の位置でボールに触りながら、バイタルエリアでは持ち前のテクニックを活かしてチャンスを演出。ドリブルで仕掛けるだけではなく、球離れの良さで相手を手玉に取った。ラストパスやシュートの精度も高く、今大会は6試合で2得点をマーク。決勝では1-1で迎えた後半7分には木村匡吾(3年)のゴールに関与。中に切れ込み、左サイドを駆け上がってきた左SB中尾誉(3年)にパスを送って得点の起点となった。王者として迎える来季のプレーも楽しみだ。

FW
西丸道人(神村学園/2年)
夏までは相手に止められる場面が少なくなく、完全なレギュラーと言える存在ではなかった。だが、今大会は2トップの一角で起用されると、スピードを活かした仕掛けで相手を翻弄。一戦ごとに自信を深め、福田の相方としてその名を全国に売った。とりわけ、素晴らしかったのは青森山田との準々決勝。福田がすらしたボールに反応すると、正確なシュートで同点弾をねじ込む。直後にも自らのシュートが起点となって、福田の決勝点が生まれた。「来年はお前だぞ」と福田から想いを託された点取り屋はリベンジを果たすべく、ひと回りもふた回りも強くなって冬の大舞台に戻ってくるだろう。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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