ニュース > 日本 > 本文
サッカー産業崩壊の危機、Jリーグはどう生き残るか サッカージャーナリスト 大住良之
{by} www.nikkei.com

 21世紀にはいって急速に膨張した「サッカー産業」が、崩壊の危機にある。

 

 4月10日、国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長は、全世界の211の加盟協会に向けてビデオメッセージを送り、「どんな試合、どんな大会、どんなリーグも、ただ一人の人間の生命には代えられない」と述べて、再開の準備を急ぐリーグに自重を求めた。

 

「安全が保証されないなかでの再開は無責任」と訴えるFIFAのインファンティノ会長=ロイター

 

■リーグ再開を急ぐ欧州5大リーグ

 

 欧州の「ビッグ5」と言われるイングランド・プレミアリーグ、ドイツ・ブンデスリーガ、スペイン・リーグ、イタリア・セリエA、そしてフランス・リーグのなかで、いま、リーグ再開に向けた動きが出始めている。厳しい外出制限が継続するなか、練習再開などの動きが起こっているのだ。それに対しインファンティノ会長は、「100パーセントの安全が保証されないなかで再開するのは、無責任極まりない行為だ」と非難している。

 

 巨大な放映権契約の上に成り立っている巨大リーグほど、新型コロナウイルスによるリーグ中断の影響は大きいといわれる。もし現在のまま2019/20シーズンが終了という事態になれば、欧州5大リーグの総損失は40億ドル(約4320億円)にものぼるだろうと、米監査法人デロイトは報告している。

 

 現代のプロサッカークラブの収入は、3つの柱で成り立っている。第1は「入場料などホームゲーム開催による収入」、第2は「スポンサー収入」、そして第3は「テレビ放映権収入」。そのなかで、21世紀の最初の20年間で急速にふくらんだのが放映権収入である。

 

 1995年12月にベルギーのプロサッカー選手が欧州司法裁判所で勝訴したことで各国リーグの「外国人制限」が崩壊した。そのタイミングは、欧州各国のテレビ放送の「デジタル多チャンネル化」の時期と重なっていた。視聴可能チャンネルが一挙に何十倍にも増えたなか、視聴者獲得戦争に勝つには、多くの人を引きつける「キラーコンテンツ」が必要だ。サッカーの放映権が急騰するのは当然のなりゆきだった。そして「外国人制限解除」にこれまでとはケタ違いの放映権料が注ぎ込まれて生まれたのが、世界のスターを根こそぎ集めるプレミアリーグのような怪物であり、「ビッグ5」の巨大クラブだった。

 

■コロナ後も放映権収入はスムーズに確保か

 

 1980年代に欧州のサッカーに吹き荒れた「フーリガン」騒ぎに嫌気がさしてサッカーから距離を取っていたスポンサーが戻ってきたのも、競争の激しいテレビ放映のレベルアップによってサッカーのイメージが急速に上がり、そこに「ブランドイメージ強化」の道があることを見たからだった。ウエア契約、ユニホームの胸や背中につけるロゴ契約、スタジアム内の広告看板契約などで、現在では、年に400億円を稼ぐクラブもある。

 

 こうしたリーグやクラブがいま「再開」を急いでいるのは、収入の大きな部分を占める放映権契約とスポンサー契約をまっとうするためにほかならない。入場料収入など「第1の収入源」を失っても第2、第3の収入源であるスポンサー、テレビ放送との契約義務を果たせば、クラブを保つことはできるからだ。

 

 では、「コロナウイルス後」にはどうなるか。試合が完全な形でできるようになれば、放映権収入は比較的スムーズに従来のレベルに戻るだろうといわれている。キラーコンテンツ争いはまだ続いており、放映権収入については、どのくらい試合ができない期間が続くかが主要な懸念となる。その期間に経営破綻するクラブは当然ある。

 

 スポンサー収入はそう簡単な話ではない。今回のコロナウイルス禍は、多かれ少なかれほとんどの産業にダメージを与え、産業界は生き残りをかけた構造改革を強いられる。「ブランドイメージ強化」というモチベーションは企業要素のなかでは強いとは言えず、どちらかと言えば真っ先に切られる運命にある。バブル経済崩壊後の日本の企業スポーツがどうなったか思い起こせば、容易に想像がつく。放映権とスポンサー、両翼のエンジンで空高く飛んでいた現代のプロサッカーという産業は、その「片肺」を失い、大きく崩れる危険性をはらんでいるのだ。

 

 欧州のトップリーグの話を中心にしてきたが、構造としてはJリーグも例外ではない。「収入の3本柱」も変わらない。とくに2017年以降、英パフォームグループのスポーツ動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」との放映権契約がリーグとクラブの収益を伸ばし、活気につながってきた。

 

 ただダゾーンとJリーグの契約は、日本という市場への将来性への先行投資という面が大きく、欧州のビッグクラブと放映権料との関係とは少し違う。コロナウイルス禍を機にダゾーン側から契約見直しの提案があってもまったく不思議ではない。

 

■クラブの根っこはホームタウン

 

 そしてスポンサーについては、私は大きな危機感をもっている。日本経済の先行きがまったく見えないなか、Jリーグを支えるスポンサー企業がコロナウイルス禍の後始末に精力を割かなければならない状況に、リーグもクラブも小さからぬ影響を受けることになるだろう。

そうした状況は、この後にも起きるに違いない。スポンサーだけでなく、放映権収入が思うようにはいらない時期(ほんの数年前までがそうだった)もくるかもしれない。

 

 そのときに生き残るには何が必要か――。「プロサッカークラブの基本」に戻るしかないと私は思っている。ホームゲームの開催による収益を中心にクラブを運営していくことだ。ホームタウンと、ファン・サポーターとのつながりをより強固なものとし、ホームタウン、ファン・サポーターのためにプレーし、戦うクラブであることを示し続けることだ。もうひとつ言えば、ホームタウンとのつながりが強いことこそ、企業にスポンサーとなる意欲を増すはずだ。

 

2月にJリーグが開幕し、選手を迎える湘南のサポーター。新型コロナウイルス感染予防のため、マスク姿の観客が目立った=共同

 

 「ホームタウンのためにプレーし続ける」という絶対的なベースさえ見失わなければ、クラブ存続のための道もおのずと見えてくるだろう。

 

関連ニュース
日本代表の北中米W杯アジア最終予選・オーストラリア戦の会場が決定!! 豪州連盟「最新鋭のスタジアム」

オーストラリアサッカー連盟(FFA)は今月、来年6月5日にオーストラリアで行う北中米W杯アジア最終予選・オーストラリア代表対日本代表の会場がパース・スタジアムに決まったことを発表した。キックオフ時刻は後日発表される。 日本はC組で頭ひとつ抜けており、3月シリーズでW杯の出場権を獲得できる状況。ただ2位から6位までは勝ち点1差の大混戦となっており、オーストラリアにとっては残り2試合で迎える日本戦の重要度は極めて高いものとなる。 FFAはパース・スタジアムについて「欧州クラブとの親善試合などが行われた最新鋭のスタジアム」と紹介。2018年に公式オープンした同スタジアムは6万人以上を収容でき、男子のオーストラリアA代表戦が開催されるのは日本戦が初となる。...

オーストラリアサッカー連盟
{by} web.gekisaka.jp
ガンバ大阪 VS サンフレッチェ広島 予想、対戦成績、最新情報2024/12/8

ガンバ大阪 VS サンフレッチェ広島試合予想 ガンバ大阪は最近、好調を維持しており、直近5試合で3勝1引き分け1敗、得点10、失点8と、攻撃力は高いが守備に弱点がある。 一方、サンフレッチェ広島は2連勝中で好調だ。しかし、アウェー戦では苦戦しており、直近2試合で敗退しており、アウェーでのパフォーマンスが弱いことを示している。 ガンバ大阪はAFCチャンピオンズリーグエリートへの出場権獲得にまだ望みがあるものの、その望みは薄く、タイトル獲得に向けてまだ戦っている広島に比べるとモチベーションは低い。 ブックメーカーはアウェーチームに有利な-0.50のハンディキャップを設定しており、この試合では広島が優勝候補であると示唆している。 広島のタイトル獲得への強い意欲と有利なオッズを考えると、この試合では広島が勝利すると予想されている。 試合予想:サンフレッチェ広島-0.5 ...

J1リーグ
ガンバ大阪 VS サンフレッチェ広島
{by} 7msaka.com
FC東京 VS セレッソ大阪 予想、対戦成績、最新情報2024/12/8

FC東京 VS セレッソ大阪試合予想 FC東京は現在3連敗中で、特にホームではホームアドバンテージを効果的に生かせず、調子が悪く苦しんでいる。 一方、セレッソ大阪も最近は期待外れのパフォーマンスで、直近4試合で1勝1引き分け2敗となっている。しかし、アウェーでの成績は素晴らしく、アウェー戦では力を発揮している。 FC東京の最近の苦戦とブックメーカーからのサポート不足、そして大阪の堅実なアウェー戦成績を考えると、この対戦ではセレッソ大阪が無敗を維持すると予想されている。 したがって、この試合でセレッソ大阪が勝つか引き分けになると予想するのは妥当であり、負けない可能性が高い。 試合予想:セレッソ大阪0 7Mスポーツ 国際版APPにはプロ予想と素人予想が満載、もっと情報を手に入れるなら、ダウンロードしてご活用ください! 方法1.画...

FC東京 VS セレッソ大阪
J1リーグ
{by} 7msaka.com
浦和レッズ VS 川崎フロンターレ 予想、対戦成績、最新情報2024/11/22

浦和レッズ VS 川崎フロンターレ試合予想 今シーズン、この2つの強豪チームはリーグ中位の成績にとどまり、成績は振るわなかった。 しかし、浦和レッズは過去3戦で2勝1分けを記録し、前戦では優勝候補のサンフレッチェ広島にも勝利した。 対照的に、川崎フロンターレはAFCチャンピオンズリーグエリートにも参加しているので、リーグ戦での成績が芳しくなかった。 さらに、両チームの過去対戦成績も引分率が高いだ。 したがって、この試合ではホームチームが無敗になると予想されている。 試合予想:浦和レッズ0 7Mスポーツ 国際版APPにはプロ予想と素人予想が満載、もっと情報を手に入れるなら、ダウンロードしてご活用ください! 方法1.画像のQRコードをスキャンするとウンロードできます;方法2.下記のリンク先よりもダウンロードできます。 https://a...

浦和レッズ VS 川崎フロンターレ
J1リーグ
{by} 7msaka.com
FC東京のクラモフスキー監督が今季で退任「私たち全員の取り組みが将来成功するための土台を築いたことは確か」

FC東京は19日、ピーター・クラモフスキー監督(46)が今季限りで退任することが決定したと発表した。後任については決まり次第、改めて報告するという。 オーストラリア出身のクラモフスキー監督は過去に横浜F・マリノスのヘッドコーチ、清水エスパルスとモンテディオ山形の監督などを歴任し、昨年6月にFC東京の指揮官に就任した。同シーズンはJ1リーグ戦を11位で終え、今季は残り2試合で8位につけている。 今季限りでの退任に際し、クラブ公式サイトを通じて「私がここでみなさまとともに過ごした期間、トロフィーを手にすることはできませんでしたが、私たち全員が取り組んできたことが、将来成功するための土台を築いたことは確かです」とコメント。「いつもみなさまのサポートは特別なものと感じていました。 近い将来、FC東京がチャンピオンになること、そしてアジアを制覇することを願っています」と述べ、選手、スタッフ、...

ピーター・クラモフスキー監督
FC東京
{by} web.gekisaka.jp
元Jリーガーが前立腺がん(ステージ4)と診断…GKコーチとして在籍する長野「寛解に向けたサポートを惜しみません」

AC長野パルセイロは19日、GKコーチを務めるシュナイダー潤之介氏のチーム離脱を発表した。 シュナイダー氏は体調不良のため医療機関を受診し、10月23日からチーム活動を休止。精密検査の結果「前立腺がん(ステージ4)」と診断された。 クラブは公式サイト上で「治療に専念するシュナイダー潤之介GKコーチの寛解に向けたサポートを惜しみません」と表明。「ファン・サポーターの皆様や関係各位、クラブ等で実施できる支援方法につきましては、明確になりました時点で随時お知らせさせていただきます」とし、「それまでは、どうぞ温かく見守っていただけますと幸いです」と述べた。 現在47歳のシュナイダー氏は現役時代にサガン鳥栖など国内の複数クラブでプレー。引退後はGKコーチとなり、2023年から長野に在籍していた。 以下、クラブ発表プロフィール ●シュナイダー 潤之介(Junnosuke SCHNE...

シュナイダー潤之介氏
{by} web.gekisaka.jp
至近距離から相手にボールを投げつけて退場…大宮FW杉本健勇の処分内容が決定

Jリーグは18日、J3第37節の試合で起きた行為について、大宮アルディージャFW杉本健勇とSC相模原MF岩上祐三に1試合の出場停止処分を科すと発表した。 杉本は16日に行われたFC岐阜戦(△2-2)の後半25分に一発退場。Jリーグは「(公財)日本サッカー協会 競技および競技会における懲罰基準に照らして審議した結果、同選手の至近距離から相手競技者に向かってボールを投げつけた行為は、『選手等に対する反スポーツ的な行為』に該当すると判断、1試合の出場停止処分とする」と説明している。 また、岩上は15日のFC大阪戦(●0-1)の後半20分にレッドカードを受けた。Jリーグは「(公財)日本サッカー協会 競技および競技会における懲罰基準に照らして審議した結果、同選手のボールとは関係の無いところで相手競技者を突き飛ばし押し倒した行為は、『選手等対する反スポーツ的な行為』に該当すると判断」とし、同じ...

Jリーグ
杉本健勇
{by} web.gekisaka.jp
10月のJ1月間ヤングプレーヤー賞はMF鈴木淳之介!! 湘南から2か月連続の受賞

Jリーグは12日、湘南ベルマーレのMF鈴木淳之介(21)が10月度のJ1月間ヤングプレーヤー賞を受賞したことを発表した。湘南からの受賞は9月のFW鈴木章斗(21)に続いて2か月連続となる。 鈴木は10月の2試合でフル出場。第33節の東京ヴェルディ戦は(○2-0)完封勝利し、第34節のサンフレッチェ広島戦では当時首位だった相手に2-1で競り勝って3ポイントの獲得に貢献した。槙野智章選考委員は「J1の中でも最も強度のある広島相手に落ち着いたプレーを見せていた」と振り返り、丸山桂里奈特任委員は「広島戦では相手からのハイプレスにも焦ることなく、冷静に繋ぎ、タイミング良く持ち出して、落ち着いたプレーがチームの勝利に大きく貢献した」と鈴木を称えている。 鈴木は受賞に際して「10月度の『月間ヤングプレーヤー賞』に選んでいただきとても嬉しく思います。満足することなく引き続き頑張りたいと思います。そ...

J1月間ヤングプレーヤー賞
鈴木淳之介
{by} web.gekisaka.jp
イニエスタの日本引退試合が味スタで開催!! シャビ、ロベルト・カルロスら参戦の豪華“エル・クラシコ”OBマッチ

株式会社SPORTS&LIFEは12日、10月に現役引退を発表した元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタの日本での引退試合が12月15日に味の素スタジアムで行われることを発表した。 この引退試合はエル・クラシコとして知られるバルセロナ対レアル・マドリーのOBマッチとなり、両クラブに所属したレジェンドが日本で対戦する。 バルセロナレジェンドにはイニエスタのほかシャビ・エルナンデス氏、リバウド氏、ハビエル・マスチェラーノ氏アドリアーノ氏などの参戦が決定。対するレアル・マドリーレジェンドにもルイス・フィーゴ氏、ロベルト・カルロス氏、イケル・カシージャス氏といった名選手が名を連ねる。キックオフは午後2時を予定している。 以下、11月12日時点の参戦選手 ▽バルセロナレジェンドアンドレス・イニエスタシャビ・エルナンデスハビエル・マスチェラーノリバウドハビエル・サビオララファ...

アンドレス・イニエスタ
{by} web.gekisaka.jp
今季で現役引退の愛媛DF森脇良太、来季の役割が決定「これからもディープなディープなお付き合い」

愛媛FCは12日、今シーズン限りで現役を引退したDF森脇良太が来季より愛媛FCポジティブエナジャイザーに就任することを発表した。 Jリーグ屈指のお調子者キャラとしても親しまれた森脇は「イベントやメディア出演を通じ、愛媛FCを広くPRすることに加え、愛媛FCの価値と勝ちを向上させるために現場にエネルギーを注入する役割」を担当するという。クラブはこの役割を2022年に新設し、これまでは「自らポジティブエネルギーを生み出して周りに良い影響を与えられる」現役所属選手が務めていた。 森脇はクラブを通じて以下のようにコメントしている。 「この度、愛媛FCポジティブエナジャイザーに就任することとなりました。愛媛FCや愛媛県を盛り上げ、愛媛FCの価値を高められるように自分に出来ることを全力で頑張ります!サポーター・地域・企業との繋がりがもっと深く強固なものになるように愛媛はもちろん日本全国を力...

愛媛FC
{by} web.gekisaka.jp