「手応えがない年だった」県新人戦8強校が全国レベルの優勝候補を撃破!ルーテル学院が選手権切符を掴めたワケ
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絶対的な優勝候補はスーパープリンスリーグ九州を制した大津だった

 

 

 熊本県予選の優勝候補筆頭は大津だった。春先の九州新人戦は圧倒的な強さで制し、スーパープリンスリーグ九州はBパートを無敗で優勝。FW半代将都(3年)、宮原愛輝(3年)は全国レベルのアタッカーで、脇を固めるMF森田大智(2年)やMF大島清(3年)も能力が高い。個々の実力に加え、チームとしての完成度も抜群。県外の関係者からも高い評価を得ており、付け入る隙はないかと思われていた。しかし、準決勝でまさかの敗戦。0−0のPK負けで相手の倍となる14本のシュートを放ちながら、最後まで牙城を崩せなかった。

 

 その大津に土を付けたのが、熊本県リーグ1部に籍を置くルーテル学院だ。選手権には4回しか出場していないが、2010年に過去最高のベスト8に進出。プロにも多くの選手を輩出しており、三原雅俊(柏)はボランチとして長きに渡って活躍している。近年は大津に加え、熊本国府や秀岳館などが県内で躍進。全国舞台に顔を出せていなかったが、今大会は勝負強さを見せて頂点に立った。

 

 プロの道に進むような逸材や圧倒的な個人技で勝負できるタレントはいない。なぜ、ルーテル学院は勝ち上がれたのか。ポイントは今大会の予選にあった。

 

「新人戦もベスト8で負け、インターハイ代替開催となった大会も熊本国府にボールを握られて終盤の2失点で逆転負け。これはどうしようかなと思わされた。大津は近年のチームと比べても最強。(新型コロナウイルスの影響で活動を自粛していたので)コンディションを考えて練習を抑えたりもしたし、逆にがむしゃらに練習をさせて怪我をしたりもした。監督に就任して12年目。一番手応えがない年だった」

 

 こう話すのはチームを率いる小野秀二郎監督だ。3月以降は他のチームと同じように全体でトレーニングが行なえず、寮生は実家に帰した。活動が再開した6月初旬までは子供たちを指導できず、自粛中のトレーニングも子供たちの意向に任せる形に。再開後は公式戦が少なく、チーム作りやコンディション調整が今までにないほど難航した。

 

 風向きが変わり始めたのは、今予選に入ってから。その戦いぶりがチームに変化をもたらした。

 

3試合連続のPK戦勝利。厳しい戦いを経験して成長

 

 

 初戦となった3回戦は有明に13−1で快勝したものの、続く県リーグ2部に所属する開新との一戦は1−0の辛勝。厳しい戦いを強いられたが、勝負を競う公式戦が選手たちに経験として蓄積された。特に今季はインターハイが中止となり、リーグ戦も昇降格を設けないレギュレーションで行なわれている。そのため、例年以上に勝負勘が養われず、ゲームの運び方などを学ぶ場があまりにも少ない。しかし、この選手権予選では一発勝負の難しさを味わい、選手たちが逞しくなった。小野監督は言う。

 

「選手権に入って厳しい戦いを経験して、大きく成長してくれた」

 

 そうした戦いが凝縮されていたのが、準々決勝の熊本商戦だ。圧倒的に攻め込みながら、決定力不足で無得点。最後はPKで勝ち切ったなかで、焦れずに戦えた点がチームに自信を生んだ。

 

「自分たちは熊本商に新人戦で負けていたので、今回は無失点に抑えて3点を取って勝とうと話していた。だけど、決定機を決められず、普通であれば試合の流れは相手にいってしまう。そこで地に足を付けて戦えたからこそ勝てたと思う。大津戦もPKに行ったけど、熊本商に負けなかったから得点が奪えなくても勝てる自信はあった」(伊井舜哉/3年)

 

 接戦から得た学び。逆に大津戦は攻め込まれたが、最後まで足を止めず、スコアレスに持ち込んでPK戦で勝利した。

 

 11月21日に行なわれた熊本県予選決勝も、熊本国府にゴールを奪われてもおかしくなかった。自分たちがチャンスを決め切れず、ゲームを難しくしたのは間違いない。しかし、どんな展開でも我慢強く戦う術を持ち合わせていたからこそ、スコアレスでも今大会3度目のPK勝ちを引き寄せられた。

 

 4年ぶりに挑む選手権の舞台。現状のままで、上位進出を果たせるとは誰ひとり思っていない。エースのFW島崎大河(3年)などが決定力不足を克服し、自信を深めた守備はCB坂本光(2年)と主将の左SB福島健琉(3年)を中心により強固にできるか。さらなる飛躍を目指し、ルーテル学院は歩みを止めない。

 

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

 

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